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んアガペーという土台から遊離すると、自分のニーズ、利益中心の行動をとるようになり、そのために巧みに他者を道具として利用しようとします。そこまでいかない場合でも、自分大事で、自分にとって価値があり、大切だと認める人だけをまわりに集め、内輪なクラブを形成し、その埒外にある人は排除し、無視するという結果を招きます。
このことは、「うち・そと」「上・下」を強く意識する、日本の人間関係にしばしば見られるパターンです。
こういった人間関係では、仲間として認められていることが最重要課題。仲間はずれになれば居場所を失ってしまいます。ですから、仲間とよい関係を保ち、“みんな”との和を損なわないよう、気配り、こころ配りだけは怠らないようにしなければなりません。そのため、常にどこかに緊張感が残ります。気配り、心配り、という言葉自体、その本質は文字通り、“気配・心配”なのです。
ところが、アガペーの関係では、その出発点で“自分”を明け渡してしまっていますから、失うものがありません。それゆえ、内を向いて自己防衛的になる必要がないのです。こころを開き、素直で、自由でいられるのです。
それは、“自分”を解き放つことでもあります。自分を無にするからこそ、逆に本来の自分らしさが現れる、ということもできるでしょう。自分を空しくして人々に仕える、その姿にこそ、われわれはマザー・テレサの“彼女らしさ”を見、彼女を活かし支えている、アガペーの輝きを見るように。
ボランティア精神の原点も、このアガペーの愛にあります。「アガペー」というギリシア語は、やがて聖書がラテン語に翻訳されたとき、“カリタス”という言葉に置き換えられ、中世以来、

 

 

 

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